著チョ篇―詩経国風・斉風
俟我於著乎而 我を著に俟まつ 門の内で待ってる彼氏
充耳以素乎而 充耳は素を以もってす ちらりと見える白い耳玉
尚之以瓊華乎而 之これに尚くわふるに瓊華ケイカを以てす さらに腰のおび玉揺れる
俟我於庭乎而 我を庭に俟つ 庭の中で待ってる彼氏
充耳以青乎而 充耳は青を以てす ちらりと見える青い耳玉
尚之以瓊瑩乎而 之に尚くわふるに瓊瑩ケイエイを以てす さらに腰のおび玉が鳴る
俟我於堂乎而 我を堂に俟つ 堂の上で待ってる彼氏
充耳以黃乎而 充耳は黄を以てす ちらりと見える黄色い耳玉
尚之以瓊英乎而 之に尚くわふるに瓊英を以てす さらに腰のおび玉光る
〈形式分析〉
Ⅰ~Ⅲ 俟我於[a]乎而
充耳以[b]乎而
尚之以瓊[c]乎而
毎詩行三つの箇所でパラディグム(同系列語)を変換し、三つのスタンザを反復する形式。パラディグム変換による反復はリフレーンとは違う。同じ三つの場面が繰り返されるように見えるが、中身は少しずつ変わっていき、全体から見れば動画のような動きを作り出す。これが詩経における基本形式の効果である。
パラディグム表を見る。縦の列(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)はそれぞれ音声上の類似性によるパラディグム。Ⅰは~ag、Ⅱは~eng、Ⅲは~angの韻尾が共通。差異の中の類似を発見することが詩法の一つのテクニックである。この類似の発見が意味領域の異なるものを結びつける。
横の列(a・b・c)はそれぞれ意味上の類似性によるパラディグム。同じ意味領域で異なった意味の言葉の発見が詩の眼目でもある。aは著(塀と門の間の場所)→庭→堂の変換によって空間移動を表している。恋人が門に入り、庭に入り、堂に入っていくという一連の動きが表現されている。作者(女性)は家のどこからかそれを見ている。さらに次の詩行における男が身につけるアクセサリーの色(白→青→黄)、種類(瓊華→瓊瑩→瓊英)とが次々と姿を変えて作者の目に映じ、それらが恋人の到来を告げる。心理が直接に表現されていないのに作者の胸の高まりはクライマックスに達していく。
〈語釈〉
〇著・・・門の内側にあって、家を遮る塀と、門の間の場所。家に入る客がしばらく立ち止まる場所である。
〇乎而・・・リズムを調節する詞。
〇充耳・・・耳飾り。男もイヤリングをつけた。
〇素・・・白色。
〇尚之・・・尚は「その上にくわえる」 の意味。尚之は「さらにそれに加えて」の意味。
〇瓊華・・・色の混じっている宝石。瓊は美しい意味。瓊華は男が腰に帯びる佩玉の一つ。佩玉のプレゼントは男の女に対する告白の常套的表現なので、これが下敷きになっている。つまり佩玉への熱い視線は男の告白(あるいは結婚の申し込み)の期待である。
〇庭・・・堂の前の広場。平らに均した庭。
〇瓊瑩・・・光が中に透き通る宝石。これも佩玉の一つ。
〇瓊英・・・光って色の美しい宝石。
俟我於著乎而 我を著に俟まつ 門の内で待ってる彼氏
充耳以素乎而 充耳は素を以もってす ちらりと見える白い耳玉
尚之以瓊華乎而 之これに尚くわふるに瓊華ケイカを以てす さらに腰のおび玉揺れる
俟我於庭乎而 我を庭に俟つ 庭の中で待ってる彼氏
充耳以青乎而 充耳は青を以てす ちらりと見える青い耳玉
尚之以瓊瑩乎而 之に尚くわふるに瓊瑩ケイエイを以てす さらに腰のおび玉が鳴る
俟我於堂乎而 我を堂に俟つ 堂の上で待ってる彼氏
充耳以黃乎而 充耳は黄を以てす ちらりと見える黄色い耳玉
尚之以瓊英乎而 之に尚くわふるに瓊英を以てす さらに腰のおび玉光る
〈形式分析〉
Ⅰ~Ⅲ 俟我於[a]乎而
充耳以[b]乎而
尚之以瓊[c]乎而
|
Ⅰ |
Ⅱ |
Ⅲ |
a |
著 tiag |
庭 deng |
堂 dang |
b |
素 sag |
青 ts'eng |
黃 ɦuang |
c |
華 ɦuăg |
瑩 ・eng |
英 ・iāng |
(パラディグム表)
毎詩行三つの箇所でパラディグム(同系列語)を変換し、三つのスタンザを反復する形式。パラディグム変換による反復はリフレーンとは違う。同じ三つの場面が繰り返されるように見えるが、中身は少しずつ変わっていき、全体から見れば動画のような動きを作り出す。これが詩経における基本形式の効果である。
パラディグム表を見る。縦の列(Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ)はそれぞれ音声上の類似性によるパラディグム。Ⅰは~ag、Ⅱは~eng、Ⅲは~angの韻尾が共通。差異の中の類似を発見することが詩法の一つのテクニックである。この類似の発見が意味領域の異なるものを結びつける。
横の列(a・b・c)はそれぞれ意味上の類似性によるパラディグム。同じ意味領域で異なった意味の言葉の発見が詩の眼目でもある。aは著(塀と門の間の場所)→庭→堂の変換によって空間移動を表している。恋人が門に入り、庭に入り、堂に入っていくという一連の動きが表現されている。作者(女性)は家のどこからかそれを見ている。さらに次の詩行における男が身につけるアクセサリーの色(白→青→黄)、種類(瓊華→瓊瑩→瓊英)とが次々と姿を変えて作者の目に映じ、それらが恋人の到来を告げる。心理が直接に表現されていないのに作者の胸の高まりはクライマックスに達していく。
〈語釈〉
〇著・・・門の内側にあって、家を遮る塀と、門の間の場所。家に入る客がしばらく立ち止まる場所である。
〇乎而・・・リズムを調節する詞。
〇充耳・・・耳飾り。男もイヤリングをつけた。
〇素・・・白色。
〇尚之・・・尚は「その上にくわえる」 の意味。尚之は「さらにそれに加えて」の意味。
〇瓊華・・・色の混じっている宝石。瓊は美しい意味。瓊華は男が腰に帯びる佩玉の一つ。佩玉のプレゼントは男の女に対する告白の常套的表現なので、これが下敷きになっている。つまり佩玉への熱い視線は男の告白(あるいは結婚の申し込み)の期待である。
〇庭・・・堂の前の広場。平らに均した庭。
〇瓊瑩・・・光が中に透き通る宝石。これも佩玉の一つ。
〇瓊英・・・光って色の美しい宝石。
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