有杕之杜ユウテイシト篇―詩経国風・唐風
有杕之杜 杕テイたる杜ト有り 枝振りのよいやまなしは
生于道左 道の左に 生ず 道のかたわらに茂ってる
彼君子兮 彼かの君子よ 恋しい恋しい背の君よ
噬肯適我 噬ここに肯あへて我に適ゆけ ねえお願い私のもとへ
中心好之 中心之これを好めり 心底好きでたまらない
曷飲食之 曷なにもて之に飲食せしめん 何のごちそうしてあげよう
有杕之杜 杕テイたる杜ト有り 枝振りのよいやまなしは
生于道周 道の周くまに 生ず 道のすみに茂ってる
彼君子兮 彼かの君子よ 恋しい恋しい背の君よ
噬肯來遊 噬ここに肯あへて来り遊べ ねえお願い遊びにおいで
中心好之 中心之これを好めり 心底好きでたまらない
曷飲食之 曷なにもて之に飲食せしめん 何のごちそうしてあげよう
〈形式分析〉
Ⅰ・Ⅱ 1有杕之杜
2生于道[a]
3彼君子兮
4噬肯[ b ]
5中心好之
6曷飲食之
a・bの二か所でパラディグム(同系列語)を変換して二回反復する形式。5・6は一字も変えないリフレーン部である。
縦の列(Ⅰ・Ⅱ)はそれぞれ音声上の類似性をもつパラディグム。Ⅰは~ar、Ⅱは~iogという語尾を共通にもつ。
横の洌(a・b)はそれぞれ意味上の類似性をもつパラディグム。aは空間的位置関係を示す語。植物が生えている場所の指定である。bは人間の行動を表す語。場所を移すという動作(自分のもとに訪れる行為)を表している。b―Ⅰではまっすぐやって来ること、b―Ⅱでは何のためにやって来るかを限定する。
冒頭に植物モチーフを掲げる。これは恋愛の雰囲気や場を設定する働きがある。杜という木が鬱蒼と茂ることは、その下で憩うことを暗示させる。覆いかぶさる植物は女性をかばって守り、大事にする男性の愛の象徴でもある。この木が道の人目につかない場所に存在する。これは男女のデートにうってつけの場所である。女性はここで男性を待っているのである。
3・4は誘いの文句。「こっちへまっすぐいらっしゃい」から「遊びにいらっしゃい」に換える。遊という語は「楽しみを求めて定位置を離れてよそに移動する」ことである。本詩の文脈では恋の遊びであることは言うまでもない。
リフレーン部では「中心之を好めり」という赤裸々な告白の後に、飲食モチーフで締めくくる。「食べる」「飲む」という行為は性的な行為の譬喩になることが多い。詩経には食事モチーフが男女の愛(性愛)を表現する常套的表現である。
〈語釈〉
〇有杕之杜・・・之はA之B(AであるところのB)と二語をつなぐ働きがある。
〇杕・・・枝葉を大きく伸ばして生い茂る様子。
〇杜・・・果樹の名。Pyrus betulaefolia。バラ科ナシ属の落葉高木。マンシュウマメナシ。カホクマメナシ。
〇道左・・・道の片寄った所。
〇君子・・・女性が恋人を呼ぶ称。「背の君」と訳す。
〇兮・・・リズムを調節する詞。
〇噬・・・逝と同じで、リズムを調節する詞。
〇肯・・・「あえて」と読むが「敢えて」とは違う。うんとうなずいて、心の中で承知しての意味。
〇適・・・ある方向へまっすぐ向かう。まっすぐ行く。
〇好・・・詩経では「愛する」の意味で使われる常套語。
〇曷飲食之・・・曷は「なに」の意味。何で(何を)彼にごちそうしようか。
〇道周・・・周はぐるぐる回って入った所(くま)。左よりも片寄って人目につかない所である。
〇來遊・・・來は情を通じる意図をもって来るといったニュアンスのある詩経の常套語。
有杕之杜 杕テイたる杜ト有り 枝振りのよいやまなしは
生于道左 道の左に 生ず 道のかたわらに茂ってる
彼君子兮 彼かの君子よ 恋しい恋しい背の君よ
噬肯適我 噬ここに肯あへて我に適ゆけ ねえお願い私のもとへ
中心好之 中心之これを好めり 心底好きでたまらない
曷飲食之 曷なにもて之に飲食せしめん 何のごちそうしてあげよう
有杕之杜 杕テイたる杜ト有り 枝振りのよいやまなしは
生于道周 道の周くまに 生ず 道のすみに茂ってる
彼君子兮 彼かの君子よ 恋しい恋しい背の君よ
噬肯來遊 噬ここに肯あへて来り遊べ ねえお願い遊びにおいで
中心好之 中心之これを好めり 心底好きでたまらない
曷飲食之 曷なにもて之に飲食せしめん 何のごちそうしてあげよう
〈形式分析〉
Ⅰ・Ⅱ 1有杕之杜
2生于道[a]
3彼君子兮
4噬肯[ b ]
5中心好之
6曷飲食之
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|
Ⅰ |
Ⅱ |
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a |
左 tsar |
周 tiog |
|
b |
適我 ngar |
來遊 d(y)iog |
(パラディグム表)
a・bの二か所でパラディグム(同系列語)を変換して二回反復する形式。5・6は一字も変えないリフレーン部である。
縦の列(Ⅰ・Ⅱ)はそれぞれ音声上の類似性をもつパラディグム。Ⅰは~ar、Ⅱは~iogという語尾を共通にもつ。
横の洌(a・b)はそれぞれ意味上の類似性をもつパラディグム。aは空間的位置関係を示す語。植物が生えている場所の指定である。bは人間の行動を表す語。場所を移すという動作(自分のもとに訪れる行為)を表している。b―Ⅰではまっすぐやって来ること、b―Ⅱでは何のためにやって来るかを限定する。
冒頭に植物モチーフを掲げる。これは恋愛の雰囲気や場を設定する働きがある。杜という木が鬱蒼と茂ることは、その下で憩うことを暗示させる。覆いかぶさる植物は女性をかばって守り、大事にする男性の愛の象徴でもある。この木が道の人目につかない場所に存在する。これは男女のデートにうってつけの場所である。女性はここで男性を待っているのである。
3・4は誘いの文句。「こっちへまっすぐいらっしゃい」から「遊びにいらっしゃい」に換える。遊という語は「楽しみを求めて定位置を離れてよそに移動する」ことである。本詩の文脈では恋の遊びであることは言うまでもない。
リフレーン部では「中心之を好めり」という赤裸々な告白の後に、飲食モチーフで締めくくる。「食べる」「飲む」という行為は性的な行為の譬喩になることが多い。詩経には食事モチーフが男女の愛(性愛)を表現する常套的表現である。
〈語釈〉
〇有杕之杜・・・之はA之B(AであるところのB)と二語をつなぐ働きがある。
〇杕・・・枝葉を大きく伸ばして生い茂る様子。
〇杜・・・果樹の名。Pyrus betulaefolia。バラ科ナシ属の落葉高木。マンシュウマメナシ。カホクマメナシ。
〇道左・・・道の片寄った所。
〇君子・・・女性が恋人を呼ぶ称。「背の君」と訳す。
〇兮・・・リズムを調節する詞。
〇噬・・・逝と同じで、リズムを調節する詞。
〇肯・・・「あえて」と読むが「敢えて」とは違う。うんとうなずいて、心の中で承知しての意味。
〇適・・・ある方向へまっすぐ向かう。まっすぐ行く。
〇好・・・詩経では「愛する」の意味で使われる常套語。
〇曷飲食之・・・曷は「なに」の意味。何で(何を)彼にごちそうしようか。
〇道周・・・周はぐるぐる回って入った所(くま)。左よりも片寄って人目につかない所である。
〇來遊・・・來は情を通じる意図をもって来るといったニュアンスのある詩経の常套語。
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